
CASE
2026年9月15日
「歯が大きく欠けてしまい、歯を残すための処置がありませんく抜歯が必要」「奥歯の被せ物が食事の際に何度も外れる」「自分の歯を可能な限り残して治療をしたい」とお悩みをお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
大きく欠けた歯、虫歯が歯ぐきの中まで及んで治療ができない場合、そのまま被せ物(クラウン治療など)を装着しても長持ちせずに、被せ物がすぐにとれてしまったり、歯ぐきの中で炎症がおきたり、虫歯の再発で最終的に抜歯になってしまうことがあります。
今回は歯を残すための選択肢としてルートエクストルージョン(歯根挺出)を行い、被せ物(ジルコニアクラウン治療)で歯としての機能と見た目の回復をし、歯を残すことができた症例についてご紹介いたします。
【初診時の口腔内写真】

患者さんは[30代・男性]で、「以前通っていた別の歯科医院では、欠けた前歯を「抜くしかない」と説明を受け、全顎矯正治療とインプラント治療を組み合わせた方法を提示され、セカンドオピニオンとしてこちらの東京神楽坂歯科を伺いました。」という主訴をお持ちで来院されました。マイクロスコープを用いて、矢印部の[右上中切歯]は[虫歯の進行に伴う歯冠破折]によって健康な歯の部分の割れが歯ぐきの深い位置まで及んでいました。
仮にこのような歯の状態で無理に被せ物をすると、被せ物を支える歯が十分に確保できず、何度も被せ物が外れたり、歯が折れたりするリスクが高まります。また、被せ物の縁が歯茎の深い位置に位置すると、歯周組織の健康を保ちにくくなることもあります。そこで、レントゲン写真や歯茎の状態、歯根の長さ、割れが及んでいる範囲、周囲の骨などを確認し、歯を保存できる可能性を慎重に検討しました。
【写真2:初診時のレントゲン写真】

ルートエクストルージョンとは、日本語で歯根挺出といいます。「挺出」は矯正治療において、ワイヤーや矯正用ゴムを用いて、微力により歯を歯茎の中から引き上げる治療方法です。
歯ぐきの中に埋まってしまった歯を歯茎より引き出すことで、被せ物と歯の縁があわせることができるようになり、被せ物が外れにくくなります。抜歯を回避してご自分の歯を活用・保存できる可能性がある一方、すべての歯に適応できる治療ではありません。歯根が短すぎる場合、歯根の縦方向に大きく割れている場合、重度の歯周病がある場合などは、このルートエクストルージョンを適用できない場合もあります。
診査の結果、[割れてしまった範囲、十分な根の長さがあることなど複合的に判断した理由]から、今回はルートエクストルージョンを行った後、[支台築造・仮歯に置き換え、最終的にジルコニアクラウンのによる被せ物を装着して]治療をする計画をご提案しました。また、ご本人のご意向も全顎的な矯正治療は行なわずに、右上中切歯を抜かずに残す治療希望されました。
治療に先立ち、ルートエクストルージョンの利点だけでなく、治療期間が3ヶ月〜6ヶ月必要なこと、装置による違和感、歯の動揺、歯肉の炎症、歯肉や骨の位置の変化などの可能性も説明しています。
まずマイクロスコープを用いて[割れてしまった歯の一部、取れる範囲で虫歯]を取り除き、土台となる歯根を治療できる状態に整えます。
対象の歯はルートエクストリュージョンによるゴムが引っかかるワイヤーを取り付け、両隣の歯には矯正用ワイヤーを取り付け、ゴムの適切な力(戻ろうとする力)で歯根を引き上げました。
強い力をかければ早く動くわけではないため、歯や歯周組織の状態を確認しながら調整します。治療中は装置の周囲に汚れがたまりやすいため、ブラッシング方法や頻繁にクリーニングが必要なこともお伝えしました。

ルートエクストリュージョンのワイヤーなどを装着した写真です。ご自宅でのリモートワークとのことで、審美的には少し劣りますが歯を確実に引き出すことを優先したため、このうような設計としています。
[約3mm程度]の挺出が確認できた段階で、引っ張り出す前の位置に後戻りすることを防ぐために[約1か月]保定(後戻りするのを防ぐために必要な固定)しました。今回は歯ぐきの形を整え、清掃しやすく被せ物を装着しやすい環境をつくるように努めました。
挺出できる範囲や保定期間は、歯根や歯周組織の状態によって異なります。写真から挺出後に元々歯茎の中に位置していた「黒い(虫歯)」箇所が歯茎の外に出てきたのが確認できます。このあと、虫歯を除去して土台を作り、仮歯を装着します。

仮歯の装着をしました。

仮歯を外してみると、実際に歯茎から引き出した歯の部分(少し茶色い箇所)と白い部分の支台築造(土台)の状態がわかります。黄色の矢印の歯の部分が歯茎より上に位置していることが今後の被せ物治療が長持ちする上でとても重要です。

上記の写真のように、歯茎に炎症がない状態であれば被せ物をつくるための準備は整いました。歯の色を確認し、型取りを行います。
最終的な被せ物はジルコニアクランを装着しました。精密にジルコニアクランを作成してくださる、専門の歯科技工士に依頼しており、作成まで3週間ほど期間を要します。装着時には、被せ物の適合、隣の歯との接触、噛み合わせ、歯磨きのしやすさを確認しています。
最終的に左上中切歯の色の変色もあったため、ウォーキングブリーチ(ホワイトニング)を行なっております。


治療後は患者さんにとても満足いただけました。「最終的な数せものをした後の痛みがない・見た目も自然である、また歯茎の周りにプラークが停滞しやすい環境も、歯ブラシしやすくなりにおいがなくなった」とのお言葉をいただいております。
現在は[約2年6ヶ月]が経過し、[被せ物および歯茎の状態は安定している]状態です。定期的に当院でメインテナンスに通っていただいることもあり、経過はとても良好です。
今回ご紹介した、ルートエクストルージョンを行うことで歯を残すことができました。治療にあたり、歯科衛生士との協力のもと、歯茎のクリーニングを併行して行うとことで良好な結果が得られています。
今後被せ物の周囲にプラークの停が多くなると、虫歯や歯周病の原因、またせっかく残した歯を失うことになりかねません。毎日の歯磨きに加え、歯間ブラシやデンタルフロスを使用し、定期検診で噛み合わせや歯ぐき、レントゲン上の変化を確認することがメインテナンスでとても重要です。
歯ぐきの深い位置まで及んだ虫歯や破折たあったとしても、歯根としての長さが十分であることと周囲組織の状態によっては、ルートエクストルージョンによって歯を残せる場合があります。ただし、治療の適応や予後は、虫歯の大きさ、歯の割れ方、残っている歯の量、歯根の長さ、歯周病の有無、噛み合わせなどによって変わります。
「抜歯以外の方法があるか知りたい、なんとか残せないか」「被せ物が何度も外れて困る」という方は、まず詳しい診査を受けたうえで、ご自身に合う治療方法を相談しましょう。
– 主訴:[以前通っていた別の歯科医院では、欠けた前歯を「抜くしかない」と説明を受け、全顎矯正治療とインプラント治療を組み合わせた方法を提示され、セカンドオピニオンとしてこちらの東京神楽坂歯科を伺いました。]
– 通院時のご年齢:[36歳]
– 性別:[男性]
– 治療部位:[上顎右側中切歯・上顎左側中切歯]
– 治療内容:[ルートエクストルージョン・ジルコニアクラウン治療・ホワイトニング・ダイレクトボンド]
– 治療期間:[約6か月]
– 治療回数:[約15回]
– 費用(税込):総費用:434,000円
– [ルートエクストルージョン:110,000円]
– [支台築造:38,500円]
– [ジルコニアクラウン治療:181,500円]
– [調整料・仮歯・CT:60,000円]
– [ホワイトニング:44,000円]
– [ダイレクトボンド:38,500円]
– 主なリスク・副作用:装置による痛みや違和感、歯の動揺、後戻り、歯根吸収、歯肉・歯槽骨の位置変化、清掃不良による虫歯・歯周病など
※治療結果や治療期間には個人差があります。
※治療は全て自由診療です(2024年時点での治療費)
最後に、今回の治療を終えて歯を残して治療をご提供できて、患者さんにも治療後にとても喜んでもらえて私としても仕事冥利につきます。歯を残す治療を日々、おこなっているため、全く一緒の事例ではなくともお困りの方はぜひ当院にご相談ください。
東京神楽坂歯科
院長 菊地英樹