COLUMN
2023年12月22日
根管治療を行わないと、歯が失われる危険性があります。根管内(歯の中の神経の管)にばい菌(細菌)が停滞することで、持続的に細菌が体内に入り込みます。根の先で体内の免疫細胞と反応を起こし、根の先で膿を形成します。無症状のまま膿の形成が進行することがあり、放置すると歯が抜け落ちてしまう危険があるため、早期の治療が必要です。
根管治療は歯の根管内(体内)から細菌の数を減らす治療です。根管内の細菌を「0」にすることは不可能です。しかし、根管治療により、身体が許容できる範囲まで細菌を根管内から減らすことで歯の膿をなくし、歯を抜かずに治すことができます。
ではなぜ根管治療が必要になるのか。診断名として歯髄炎が根管治療が適用になる代表的な疾患です。この歯髄炎はむし歯に含まれる菌が歯髄(歯の中にある神経)に感染することで起きる炎症です。歯科疾患は基本的に感染症との戦いです。ばい菌が体内に侵入してくると炎症が起きます。歯で起きる感染症は虫歯、歯周病、そして歯の神経に感染をする歯髄炎や根尖性歯周炎です。どの疾患も早期に治療をしなければ、歯を失うリスクになります。
基本的に局所麻酔を行なって治療を行います。当院では治療中の痛みはほとんどありません。治療が終わって、麻酔の効果が切れてくると、治る過程で鈍痛を感じることがあります。おおよそ、2〜3日ですが、長い方で1週間ほど症状が続く場合もあります。
リドカイン(商品名:オーラ注)と呼ばれるアミド型の局所麻酔薬を使用します。アドレナリンが添加されているため、血管収縮作用により、麻酔の持続時間が長くなります。麻酔の効果持続時間はおおよそ3時間前後です。
一回の治療時間は45〜60分が一般的です。治療の期間は約3週間です。奥歯になるにつれて根管の数が増え、形態も複雑化するため治療時間及び期間も長くなります。当院で行う精密根管治療
(自由診療)は1回目の根管治療は90分、2回目・3回目は60分の計3回、治療期間は約1ヶ月です。
保険内治療は前歯・小臼歯・大臼歯で適用されます。治療費の合計は役5000円〜10000円程です。
根管治療専門医や根管治療を専門としたクリニックでは、自由診療での根管治療を行なっていることが多いです。根管治療に特化しているため、治療の精度・質が高いため、残すことができないと言われた歯も残すことができる場合も多いです。また、何度も治療を受けた歯で治らずに、専門医院で治療を受けたことで症状が改善される例も少なくありません。
健康保険内での根管治療の成功率は50%前後と言われています。一度根管治療を行った後も、再度根管治療が必要になる例は、炎症が取り切れていない、根管治療後の被せ物との間からばい菌が感染をこし、再発をするケースがほとんどです。
合併症としては、上の奥歯(臼歯)で感染が起き、放置したことで上顎洞(副鼻腔)で炎症が起きるおことがあります。上顎洞炎といい、歯が原因で引き起こされることがあります。
治療後に根の先の膿が治っているかの確認で、レントゲン撮影を行います。3ヶ月、6ヶ月、1年と再発の有無を含めて診察をします。ケアに関しては、定期的な当院でのメインテナンス及びご自宅での口腔ケアが主となります。
根管治療が終わってからも膿が消失しない場合があります。歯根端切除術・意図的再植法・ヘミセクションなどがあります。前提として、通常の根管治療を行っても治らない歯に対して、行われるのが前述した治療方法です。根管治療が難しく、抜歯となった場合は、インプラント、入れ歯、ブリッジなどの治療方法が選択されます。
適切な根管治療が行われ、定期的なメインテナンスを受けられた場合、20年以上歯が残る症例もございます。初回に行われる根管治療がとても重要です。
根管の形態は複雑です。CTを撮影することで、歯の根管形態を把握することができるためCTがとても有用です。根管治療を行う上でCTは必須と言えます。またマイクロスコープも複雑な根管形態を把握する上で不可欠です。
小児の根管治療は虫歯によるものがほとんどです。小児の虫歯の進行はとても早く、放置しているとすぐに歯髄まで到達します。到達した後は痛みが伴います。小児の場合、乳歯への根管治療が対象です。根管治療をしないと、後から生えてくる永久歯の一部が脆くなって生えてくることがあります。早めの治療をお勧めします。
治療後当日は基本的に安静が必要です。また麻酔をして根管治療をすることが多いため、誤った頬を噛んでしまったり、火傷の恐れもありますので、麻酔が覚めてから食事をすることをお勧めします。また根管治療中の歯で固い食材を噛むのは避けてください。刺激によりまれに歯が割れてしまったり、治療中の歯の痛みが増悪すること危険性があります。
その日の根管治療が終わってから、治癒する過程で痛むことはあります。根管治療を続けるたびにばい菌などの原因が根管内から除去されるため、痛みが少しずつなくなります。
根管治療後は、定期的な歯科医院での専門的なメインテナンスと呼ばれる口腔ケアを受けていただくこと推奨しています。口腔内のばい菌が増えると、根管治療を行った歯が再度感染をするリスクがあるためです。定期的な歯のメインテナンスにより、根管治療をした歯の寿命が伸びます。
根管治療が終了した歯は、歯冠部の強度が落ちるため、クラウン治療が必要です。クラウン治療により、失われた歯の機能と外観が回復できます。また、より根管治療をした歯の再感染を防ぐために、クラウンの材質としてセラミック、ジルコニア、ゴールドなどの、歯にぴたりと適合するクラウンを被せることが推奨されています。
現代の根管治療においてマイクロスコープは必須です。根管は複雑な携帯を形態をしているため、肉眼で根管の状態を把握することには限界があります。根管治療にお悩みの方は、マイクロスコープによる精密な根管治療を行なっているクリニックを受診することを推奨します。マイクロスコープにより治療の精度が向上し、残すことができないと言われた歯も残せることもあります。