
CASE
2026年10月26日
今回のブログをお読みいただいている方のほとんどは神経(歯髄)を残したいという思いから、当ブロブを見つけていただいているのではないでしょうか?また、他の歯科医院では虫歯が大きので、「神経をとりましょう」など説明を受けている方がほとんどではないでしょうか。
「できれば神経を残したい」、「歯髄を残したい」、「本当に神経を取る必要があるのか?」という皆さまの疑問や治療を受けるために知っていただきたいことをお伝えします。神経の取らずに残す治療を行った症例について、これから供覧いただきます。
結論から、大きな虫歯があっても歯髄を残すことができるケースはあります。歯髄を残せるか、当院では以下を重要な診断項目としています。
たとえば、冷たいものがしみた。しみたのは一時的か、もしくはしみた時の痛みが数分持続した。何もしていなくてもズキズキと痛むことがあったか。食事の際に噛んで痛みがあるか。どんな時にどの程度の痛みがあるのかが、歯髄の状態を把握するために歯科医師にとって歯髄を残すことができるか重要な指標です。
虫歯の範囲をレントゲンで確認します。歯の根の先端(根尖)に炎症の様子がないか。CTではより詳しく根尖の炎症がないか確認にできます。
冷温診は冷やした綿球などを歯に当てて、その際に冷たい感覚を受容するかをみています。冷たさを感じた場合は、歯髄がいきている(生活反応がある)という可能性が高いです。歯髄電気診は、微弱は電気刺激を歯に加え、歯髄の生死を診断します。歯髄電気診で反応がない場合は、歯髄が死んでいる(生活反応がない)可能性が高いです。
歯をトントンとたたいてみて、その際に痛みもしは違和感がないかを確認します。また歯髄が死んでいる場合、根尖付近にサイナストラクトという膿の出口の有無も確認します。
ご年齢とともに歯髄の容積は小さくなります。ご年齢も神経の治癒の観点から考慮します。
上記のような検査を行い、本当に「歯髄がのこせるのか?」それとも「根管治療によって、歯髄を取り除いた方が望ましいのか?」という診断をします。レントゲン、痛みの経緯なども考慮されず、大きな虫歯があるというでけで、歯髄をとるという治療の流れではありません。次の項目では歯髄を残した治療をご説明します。
ここで歯髄の役割について少し触れます。歯髄は神経組織・血管などで構成されています。歯髄は歯の痛みを受容する重要な組織です。虫歯の進行やそれに伴う痛みを脳に伝えてくれることで、歯に危険が迫っていることを知らせてくれます。
歯髄の役割についても記載したブログが以下です。ぜひご覧ください。
→ https://kagurazaka-dental.jp/column/hukai-mushiba-shinkei/
歯髄を残すことは歯の寿命という観点から重要といえます。
本当に残せる歯髄、残すべき歯髄であれば、歯髄温存療法(VPT)は歯の保存治療としての意義が高いです。
マイクロスコープを用いて、MTAによる歯髄への直接覆髄、および最終修復治療(ダイレクトボンド)についての治療の実際の手順です。
歯髄温存療法では感染防御および清潔な環境で操作が必要なため、ラバーダム防湿が必須です。歯髄に唾液の流入を防ぎます。虫歯を除去している写真です。青い範囲はう蝕検知液を用いて、虫歯の範囲を確認しています。ラバーダム防湿は右2枚の写真です。


レントゲンから、虫歯が歯髄近くに迫っているのがお分かりいただけると思います。
マイクロスコープで約10倍〜20倍の拡大視野下でう蝕を除去して、歯髄の状態を確認しています。う蝕を全て取り除くと歯髄が露出しました。

マイクロスコープで約20倍まで拡大して歯髄を観察しています。綺麗な歯髄で、出血も持続せず、止まっています。
MTAを用いて歯髄の表面を保護します。MTAの生体親和性が高く、歯髄を保護および封鎖します。歯髄の出血が止まったの確認してMTAを歯髄の上に敷き詰めます。


MTAで歯髄を保護した後のレントゲン写真です。白い箇所がMTAです。
治療後、ご本人の自覚していた冷たいものでしみる、ズキズキ痛むという症状は改善しました。その削った虫歯はダイレクトボンド治療で修復し、食事の際も症状なく順調な経過をたどっております。

→ダイレクトボンド治療について
症例 : https://kagurazaka-dental.jp/case/aesthetic01/
ブログ:https://kagurazaka-dental.jp/column/mushiba-ha-kezuru-ryou/

治療後、1年3か月経過しております。歯髄の冷温診で正常に反応を示し、打診痛、レントゲン写真からも根尖に透過像(炎症の影)がありません。
今後も術後の歯髄に変化がないか、歯のメインテナンスを含め、定期的にレントゲン写真を撮影する必要があります。治療後に大切なのは、歯髄をMTAで処置した後の経過観察です。治療をして症状がなく、安定しているから終了、ではなく歯髄が弱ってしまう可能性もあるため継続した観察が必要です。
歯髄が温存できるか、できないか、その検査を正確に行う必要があります。大きな虫歯があるから歯髄をとるのではなく、先ほどお伝えした検査を正確に行い、評価することが大切です。また歯髄温存療法に必要な機材、材料の整った環境での治療を強く推奨します。歯髄温存療法にはマイクロスコープ、ラバーダム防湿、MTAなどの機器・材料が必須です。
今回は歯髄温存療法を行いましたが、この治療は全ての歯髄に適用できません。歯髄を絶対に残せる治療ではないことをみなさまにお伝えする必要があります。正確な検査の上、歯髄を取り除く治療を選択する場合も当院ではあります。また、歯髄を残せると判断しても、最終的に歯髄を取り除いたケースもあります。最終的に歯髄温存か除去か、そして治療のその先の「歯の保存」というゴールに対してどう治療を行っていくか。歯髄を残せるか否かの判断は私たち歯科医師が責任をもって決める必要あります。また歯髄を残せない可能性のリスクを、説明をお聞きになった上でご承諾いただく必要がございます。
治療後は歯髄を保護の経過の観点から、経過観察のためのレントゲン写真を撮影し、治療の経過をみさせていただきます。
ここまで歯髄温存療法の症例についてご紹介しました。「歯髄をとらなくてはいけない」、「もう歯髄が残せない」というケースでも歯髄温存療法が適応できるケースがあります。
東京神楽坂歯科ではしっかりと検査をして、歯髄温存療法に取り組んでいます。仮に歯髄が残せなくても、精密な根管治療を行うことで歯を残すこともできます。可能な限り、歯髄の保存、そして歯の保存を皆さまにご提供できるように努めます。
今回もここまでお読みいただきありがとうございました。
東京神楽坂歯科
院長 菊地英樹